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漢字の書体

 皆さんが、パソコンで普段目にする書体

(フォント)と言えば、明朝体やゴシック体

だと思います。

 MS明朝、MSゴシックのMSは、Microsoftのことです。

漢字が中国から日本に伝わったことから、

時代とともに、様々な書体が作られてきました。

今回は、中国、日本での書体に関する話題です。

 

 古代中国には、各地で様々な文字、書体が存在しました。

これを、秦の始皇帝の時代に、秦の丞相、

李斯(リィスゥ)が、中華統一事業の一つとして、

文字の統一を行いました。この時に、

採用された書体が、篆書体(ジェンシュウティ)です。

 この篆書体、古代の書体で、大変読みにくいのですが、

現代日本人にも意外となじみのある書体です。

例えば、パスポートの表紙に、「日本国旅券」と

書いてありますが、これは篆書体です。

 ほかには、実印やお札でも採用されているほか、

日本史で出てくる「漢委奴国王」の金印、

天皇の御璽も篆書体です。篆書体には、

いくつか種類があり、例えば1万円札の表面

肖像画がある方)は、印鑑用に特化した印篆体

「総裁之印」、裏面が小篆体で「発券局長」と

押印されています。また、印篆体をもとに、

中心から上下左右に太く末広がりになる

吉相(印相)体があり、縁起が良いことから、

会社の実印でよく採用されています。

 さて、この篆書体、読みにくいだけでなく、

書くのはもっと大変です。このため、

古代中国でも徐々に使われなくなり、

篆書体が、単純化・簡素化され、

隷書体(リィシュウティ)が生まれてくる

ことになります。

秦が滅んで、漢が成立すると、公式文書で、

隷書が採用されることとなりました。

隷書は、我々でも読むことができて、

書道の上級者では、学ぶ機会もあります。

 その後、隋や唐の時代となると、

隷書から楷書(カイシュウ)に移行し、

特に、唐の太宗(タイゾン)の時代になると、

より楷書が洗練され、多くの書道家

登場することになります(初唐の四大家)。

この理由のひとつとして、

太宗が愛好していた王羲之(ワンシージー)の書体、

楷書科挙に採用したからと言われています。

 さて、明朝体は、明の時代の文字かと思いがちですが、

そうではないです。中国では、宋の時代になると、

木版による活版印刷技術が発達し、

その活字の書体として採用されたものが宋体(ゾンティ)です。

日本では、中国で宋体(宋朝体)と言われているものを、

明朝体と呼んでいます。宋朝や明朝の朝という字は、

王朝や朝廷を意味します。

日本人は、明や清と中国の国名を1文字で表しますが、

中国人は、明朝、清朝などと朝を付けます。

この流れで、〇朝体という言葉が定着しています。

ちなみに古印体や勘亭流は、日本独自に使われてきたものですので、

中国にはない書体です。

古印体は、奈良時代の寺社で使われていた書体、

勘亭流は歌舞伎で使用される書体です。